開催期間 | 2023年9月5日〜10日 |
場所 | ドイツ・ミュンヘン |
開催周期 | 2年に一回開催 |
WEB | https://www.iaa.de/en/mobility |
特記 | 次回の予定:2025年9月予定 |
2021年の初めてのミュンヘン開催ではでオンライン(バーチャル)とオフラインの融合、そして「自動車」だけの枠組みに収まらない「総合的な次世代モビリティ」、今年2023年は “Experience Connected Mobility” 「コネクテッドモビリティを体験する」をスローガンに開催されました。
IAA Mobility 2023公式発表によると、昨年は32カ国から出展744社と講演者936名が参加し95カ国から約40万人が参加しましたが、2023年は昨年を超える38 か国から出展 750社。50万人以上の来場者が参加。
300 を超えるワールドプレミアとイノベーション、500名を超える講演者。 オラフ・ショルツ首相、著名な有名人も多数訪れました。82カ国からの3,700 人以上のジャーナリストが参加し、土曜日だけでも10万人以上がIAAオープンスペースを訪れ、IAAモビリティ2023は、ミュンヘンで無事2回目の開催を大成功に収めました。
また、出展社の半分が国外から、そして30%近くの来場者が海外からの参加者で、国際的なモーターショーの名にふさわしい結果を叩き出しました。
目玉イベントとも言える試乗体験には、8,500 台以上の電気自動車と約 4,000 台の自転車、電動自転車の試乗が、ミュンヘンの各地で行われ参加者からの大好評でした。 特に前回よりも大幅に試乗回数が増えたことは、ミュンヘン市内のイングリッシュガーデンにも自転車試乗トラックを設置したことが要因のひとつかもしれません。
前回は、開催前からの大規模な反対デモが連発され、高速道路が一時混乱に巻き込まれたり、市内ではコショウ爆弾が使用され、オープンスペース界隈のカフェやレストラン・店舗からの苦情も多かったことから、今年は全てには対応しきれていない部分もありましたが、少しずつ苦情が「喜びの声」に変わる工夫がなされていました。
見本市会場では突発的なデモを警戒した物々しい入場口の持ち物チェックもありましたが、会場内はおだやか、かつ外国からの出展社・来場者が多いせいか、英語とドイツ語のほかにも、さまざまな言語でのディスカッションが聞こえてきます。 インターナショナルなモーターショーであることをより実感。
今回も展示会場、カンファレンスとサミット、そしてオープンスペースとそれぞれの特色を出す舞台を設定したIAA。
展示会場は技術的かつ未来のモビリティを研究する専門的な内容を展示、同時にサミットやカンファレンスを行い、業界者向け、研究者向けの内容が揃います。 オープンスペースでは、一般消費者もターゲットにした新製品の紹介とブランドのイメージ戦略が強く押し出されていました。
新しい感覚の乗り物となりうるモビリティに慣れ親しみ、受け入れてもらうために実際に触れて、体験してもらうための試乗の提案も数多く見られたのが特徴的です。
昨年以上にさまざまな場所で、多くのモビリティに実際に試乗してもらうことで、その体験を通して、消費者の受け入れ態勢も購入意欲も良い意味で膨らんでいく・・・誰にとってもウィンウィンなトレードショーの形が生まれつつあると実感。
さらには、モビリティの未来を担うトレードショーなるべく、反対派よりも賛成派を増やしていこうというような、トレードショー自体への好感度をアップさせるための工夫が詰まった各社のブースづくりにも、車業界の強い意思を感じます。
もちろんその一方で、モビリティは進化してサステナビリティを重視し、エネルギーだって大事に環境も破壊しない、という少々詰めすぎ感も感じるメッセージも至る所で見られたのですが・・・。
IAAモビリティは玄人のためだけでなく、開催地の商業施設、企業団体、一般市民と世界のモビリティを楽しむ人々全員に向けてゲートを開いている、という好印象が残りました。
2021年のIAAでは、中国勢によるAIを駆使した「未来感」と欧州勢による「サステナビリティと環境保護への配慮」が目立ちましたが、2023年では、すでにAIの活用も環境保護への配慮も ’行われて当然’ という前提のもと、それ以外のどこで自社の強みと他との差を出すか、という点に移行していました。
サステナビリティを早い時期から推進しているアウトドア業界でも見られた動きです。
ところで、EV車(電気自動車)にもいろいろな種類がありますが、ドイツ語でだいたい分別してみるとこのような感じになります。
電気自動車 | EV Elektrofahrzeuge |
バッテリー式 電気自動車 |
BEV Batterie-Elektrofahrzeuge |
ハイブリッド車 | HEV Hybrid-Elektrofahrzeuge |
プラグイン ハイブリッド車 |
PHEV Plugin-Hybrid-Elektrofahrzeuge |
水素 自動車 |
FCEV Brennstoffzellen-Elektrofahrzeuge |
*VはVehicle = ドイツ語ではfahrzeugeに値する
FCEVに耳馴染みがないのは、水素をエネルギーとして走り、走行時に温室効果ガスを排出しないゼロエミッション車ですが、取り扱いが非常に難しいことや、単純にどこで補給するかといった水素ステーションの問題があり、メリットとデメリットが拮抗しているからでしょうか。
ドイツを含めた欧州では2035年までに全ての車をゼロエミッションカー(ZEV)に・・・という大きな目標を掲げていますが、これも同じく「EV」であることは前提とした車づくりが推進されていきます。
今もガソリン車の良さを訴える声も、廃止ではなく規制の緩和を求める声も聞こえてはいるので、エネルギー問題、充電する設備の問題、想像していなかったであろう問題が増えたり消えたりしているなか、きっと軌道修正しながらも、なんとか地球にやさしい車社会を作っていくのでしょう。
IAAに出展していた欧州有名メーカーの担当者は「政府の進める道は紆余曲折はあるだろうから、私たちは出来る限り地球にやさしく、経費を抑えて消費者にもやさしく、そして自分達も利益を得るための技術の発展と努力を惜しまないように進んでいくだけだ」と、これからの電気自動車の未来がどう転がっても良いように対応していくという考え方を持っているそうです。
ファッションと同じく、車の業界でもフューチャー志向が強まった反動でクラッシック回帰が起こります。 2021年のORAではあえてのレトロな車体が話題を呼びました。シンプルすぎるとカラフルに。
2023年は、コンパクトな一人または二人乗りミニカー、過去に流行った前開きのドアなど、若い世代にとっては新鮮な要素を加えたマイクロカーも増えています。 元はキックボードでおなじみのブランドメーカーm-croを例に見てみましょう。
Microlinoのプロトタイプは2016年、5年後の2021年IAAでは販売モデルが発表。 2023年には 2.0が発表され、走行距離も増え、より頑丈に、エコ・サステナビリティもパワーアップし、エネルギーチャージ問題に悩む今だからこそ、より一層受け入れられるでしょう。
マイクロカーの歴史は案外古く第二次世界大戦後からで、90年代のスウォッチとメルセデスベンツのスマートの台頭、現在のEVマイクロカーのプチブームをみると、やはり良いアイデアは形を少しずつ変えて数十年後に蘇るのですね。
同じくマイクロカーを提案していた中国の会社X Electrical Vehicle(XEV)の YOYO PROは走行距離やバッテリー問題はもちろん課題の残る印象ですが、バッテリーパックを3つも積み込めて、かつ、手動でバッテリー交換ができるうえに、外装も好みで変えられます。 多くの部品が3Dプリンターで作られているので、安価にオリジナリティも求められるチョット乗りにも適したEVです。
欧州発スタートアップの中国EV車メーカーのXEV、もうなんでもアリな雰囲気を感じると思いませんか?
ちなみに中国スタートアップのEV車メーカーXpeng(小鵬汽車)は、フォルクスワーゲンから融資を受け、前年にはライダー技術で定評ある中国Livox(覧沃科技)と提携。今は危機的状況にあるXpengも上手に「朋友」を集めて、デザイン面で可愛さに定評のあるフォルクスワーゲンから学び・・・空飛ぶビートルが誕生したらいいな、と空想する楽しみのあるメーカーです。(個人的感想ですが)
免許を持たない人も自分の車(完全自動運転)が持てるようになる未来は、そう遠くないのかもしれません。
「自動化運転の段階には5段階ある」けれど、5段階(完全自動)まで王手をかけているかもしれない・・・BMWと共同開発でレベル4の自動運転可能な技術の共同開発をするフランスメーカーValeoの担当者さんにお話を伺いました。
遠隔操作をするためのソフトウェア開発から、車内をすっきりとさせるインバーター、車載充電器、DC/DC コンバーター、配電ユニット、eモーター、減速機を統合したコンパクトな 6-in-1 eAxle 。 メリットはなにより車載するあれこれが軽くコンパクトになることで消費エネルギーも節約できる点。もちろんどんな商品にもメリット・デメリットはありますが、ひとつ壊れたら全部取り替えになる可能性も考慮してリスクを半分に分けることも可能。
LiDAR(Light Detection and Ranging)ライダーと自動化運転のための装置のパイオニア的存在であり、業界では知らない人はいないメーカーですが、IAAで特に目を引いたのはコンパクト化かつスリム化に成功した冷却システム。 バッテリー問題とともに、この冷却システム問題も大きな課題のひとつですが、革新的に業界の問題を解決しています。
新しく、また今後重要視されるであろう自動運転化に伴う「人の安全と健康をどう守っていくか」というテーマも出てきていました。特に興味深い研究をおこなっていたのは、IngolstadtにあるCARISSMA 研究センター (インゴルシュタット工科大学 CARISSMA 研究試験センター)CARISSMA Forschungszentrum (Forschungs- und Testzentrum CARISSMA der Technischen Hochschule Ingolstadt)
車外への危険性の察知や研究はすでに多くなされています。 しかし、これから必要になるのは、自動運転が実現化していくことで、車内で運転することに意識を向けていない人たち、極端にいえば就寝状態の無意識化で車内にいる人の安全を守ること。
車内での姿勢や状態をセンサーでデータ収集し、人にとって安全な位置、危険のない姿勢を見つけ出す研究は今後重要なテーマのひとつになります。それらのデータを収集し、解析してこれからの車の安全を守っていこうという取り組みをおこなっています。
見本市会場では華やかな世界ではないかもしれませんが、安心してモビリティライフを楽しむための、一般の方にも知ってもらいたい研究や技術が多く発表されていました。
オープンスペースでは、昨年と違った試みがいくつか行われています。
ひとつは、イベント会場でのより盛大な「お祭り感」を盛り上げていた点。チケットホルダーへの連日の無料コンサートの開催、パフォーマンスイベント、市内の歴史的建造物をレイアウトにうまく取り込んだ「観光スポット」としての役割を付け加えたトレードショーとなっています。
特に市内のオープンスペースを無料にしたこと、ファミリートレイルを採用したことでファミリー層にもアピールし、従来の高級車を好む層へVIPツアーを行うなどで配慮。
とにかくみなさん、おいでませ
という、市内のオープンスペースは、歴史ある建造物も巻き込んだ官民参加型お祭りとしての一面を担っているのでしょう。
こういった手法は、日本の町おこしや村おこしでも使えるテクニックではないかと思うので、視察を検討される市町村のみなさま、弊社では視察のガイドやツアーも承りますので、お気軽にご相談ください。 お問い合わせはコンタクトフォームから(宣伝)
TrigoScootは創業者(息子)の膝の故障から始まります。 膝が痛いけど、ゴルフがしたい、歩かず、重い荷物を運びたいということでプロトタイプのケースと駆動パートをエンジニアの創業者(父)が制作したことで、プロトタイプを乗り回す彼の様子を見て依頼が殺到。 ある種のサクセスストーリーでもあり、親子の愛情あふれるストーリーでもある・・・そうです。 エンジンパートはそれぞれ自由に組み合わせられるので、日本からのお問合せもおまちしています、とのこと。
今期のIAAは完全自動操縦への夢が膨らむドリームモデルが多数。おそらく生きている間には実用化されて、SF世界のカーライフがやってくることを期待させてくれます。
残念だったのが、カンファレンスもステージもほぼ盛況だったが、スタートアップエリアが比較的静かだったことかもしれません。
次の開催は2025年です。
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