開催期間 | 2021年9月7日〜12日 |
場所 | ドイツ・ミュンヘン |
開催周期 | 2年に一回開催 |
WEB | https://www.iaa.de/en/mobility |
特記 | 次回の予定:2023年9月5日〜10日まで予定 |
2019年まではフランクフルトで行われていた「フランクフルトモーターショー」が、今年からミュンヘンで新しいコンセプトで開催されました。 オンライン(バーチャル)とオフラインの融合。 メッセ会場と都心部をつなぐBlue Lane、自動車の技術を応用した電動自転車なども展示する「自動車」だけの枠組みに収まらない「総合的な次世代モビリティ」の見本市です。
それまでのフランクフルトモーターショーとは異なり、ある意味ミュンヘンらしい技術機関の参加や革新的な印象が強かったIAAモビリティ2021。IAAは、Internationale Automobil-Ausstellung(国際モーターショー)の略です。 100年以上の歴史がありますが、ミュンヘンでは初回開催です。
予定を大幅に上回り、32カ国から出展744社と講演者936名が参加し95カ国から約40万人が参加する快挙を果たしました。
また、来場者の67%が40歳以下と、調査では出展者ならびに来場者の反応は非常に良かったようです。
IAA Mobility 2021の公式発表によると、展示エリアの内訳は自動車会社(98)、自転車ブランド(75)、供給会社など、テック企業(152)、スタートアップ企業(78)となります。
自動車エリアには、ドイツをはじめとする欧州車メーカー:BMW、MINI、メルセデス・ベンツ、フォルクスワーゲン、キュプラ、アウディ、ポルシェ、ルノー、アジアからもヒュンダイ、ウェイ、オラ、また有名なOEM企業や車載関連企業ファーウェイ、マイクロソフト、IBM、ボッシュ、マグナ、シェフラー、ミシュランなど。 そして、自転車ブランドのキャニオン、スペシャライズド、リーゼ&ミュラー、ローズ、ケトラーなどが出展していました。
総面積26万平方メートル、そのうち19万5千平方メートルがミュンヘン見本市会場内に、6万5千平方メートルがミュンヘン市内のオープンスペースとして公開。
市庁舎前には市民ラボが設置され、未来の「モビリティ」についての熱い議論が6日間でおよそ40時間も行われました。
見本市会場と市内をつなぐブルーレーンでは255台の車両が使用され、7,000台の試乗が予約されました。 現時点では未販売の高級電気自動車なども含まれ、多くのカーマニアが楽しめるイベントとなりました。
ミュンヘンでの開催を喜ぶ声の一方では、開催反対デモも多く発生しました。 中には過激な行動に出て高速道路が一時混乱に巻き込まれたり、市内ではコショウ爆弾が警備の警官により使用されるなどなかなかデンジャラスな一面もありました。
元々IAAがフランクフルトからミュンヘンに移ってきたのには、大きな反対運動と市の十分なサポートが得られなかった点にあると言われ、開催前から疑問視する声と喜びの声両方が聞こえてきていました。
また入場者数を割増(?)するために、有料の見本市会場だけでなく、無料の市内に設置したオープンスペースでミュンヘン初回からの成功感を割増していたのではないか、と疑問視する声もあがっています。
大きな反対デモも多数行われたり、と、そのような背景もあったからかどうかはわかりませんが、IAA MOBILITY 2021のSNSやレポートなどへのリーチも高く今年度では欧州サッカー選手権などに次ぐ重要なメディアイベントとなりました。
様々な感想と意見が飛び交っていますが、重視すべきはコロナ禍の長く続いた厳しい規制を超え、オープンスペースでもしっかりと感染防止を心がけて楽しめるように取りまとめ、様々な工夫とルールで無事会期を終えられる環境を提供した主催社とメッセ・ミュンヘンの努力と結果を称える気持ちの方が大きいかもしれません。
さて、これまでのフランクフルトモーターショーにも出展していた展示者は、「これまでのモーターショーとは全く違っていて、新車の展示だけではない様々な方面からの出展が目立った」という。 車載するアプリやソフト、車社会が影響する環境面に関した技術、乗車する人(運転手)のためのサービスなどありとあらゆるモビリティ関連事業からの出展が目立ちました。
ところでモビリティとは英単語の「動きやすさ」、「可動性」、「移動性」、「流動性」転じて様々な分野で使われますが、今回は「輸送機器」を指します。 車、近年増加中の1〜2人用小型自動車、自動車の技術を応用した自転車(カーゴバイク)なども指します。
そして、IAAは「輸送」に関連したシステムまでを含めたモビリティをテーマとした見本市でした。 システムには自動運転システムや電気自動車の充電機器とその周辺アクセサリー、日本でも始まりつつあるMobility as a Service(モビリティ・アズ・ア・サービス、MaaS〈マース〉)などなど幅広い分野が集結します。
前回までのフランクフルト・モーターショーとは比較が出来ませんが、これまでの憧れの新車・高級車のモーターショーではなく、持続可能な環境下で生活に密接したモビリティの全体像が紹介され、従来の枠を打ち破り新しい方向性を提案した見本市でした。
初日は晴天の中、ものものしい厳重な警官の警備のもとスタート。警備が厳しすぎてジャーナリスト4人が拘束され警官を訴えたなんて記事もありましたが、かなりの厳しさです。 入場前には、最初にコロナ陰性証明もしくはワクチン接種チェック、入口直前ではカバンの中身チェックも行われていました。
プレスデーの駐車場ではオートパーキングシステムのデモが行われ、近い将来は駐車スペースを探してぐるぐるぐるぐる・・・という手間がなくなるのだな、と驚きを実感できる反面、楽しみにしていたブルーレーンを全電動バスで移動が当日は無かったりする残念な面も(*試乗などは翌日からだったため)
恐らく初回ということもあり、またコロナ禍の制限があった事も理由になるかもしれませんが、非常に全てが試行錯誤しつつ行った試作段階の見本市という感じでした。
ミュンヘン市内に現れた6箇所のオープンスペース、そしてスペース通しを繋いだ自転車の試乗が楽しめるBlue Lane Micromobility。
会場内への入場は陰性証明もしくはフルワクチン接種証明などを提示する必要があり、屋外とは言え会場内ではマスクの着用が必須です。
しかしながら、屋外展示をみたり、ドライブテストを楽しめたり、屋台で食事を食べることが出来たり、と少しだけコロナ前に戻ったようなイベントを久しぶりに楽しめました。
今年のIAAのキーワードのひとつがサステナビリティではないでしょうか。
BMWからは外装が100%リサイクルの新車を発表。リサイクルアルミニウムでカラーリングもしない、まさにナチュラル(というのは不思議ですが)感があふれています。
Boschも、ほか欧州系からは電気自動車よりも車の技術を応用したEVミニカーや、バッテリーチャージも簡単、場合によっては免許も不要なカーゴバイクなどの開発と販売人気が高まっているように見えました。
新たにサステナビリティラウンジも設けて、車社会の未来とサステナビリティをつなぐセミナーが多数行われました。
またその一環として公式に設置されたフィットネスエリア。
従来のモーターショーには無かったモノですが、今回メッセ・ミュンヘンは歴史あるモーターショーがフランクフルトからミュンヘンに移転するという事に大きな意味をもたせるため、これまでとは違った革新的なものを提示・提供したいと思索しました。
特にコロナ禍のもと、広い業界でキーワードとなっている「健康」。 業界で働く労働者、そして運転による健康被害を少なくしていくということで、新しい試みの一つとなったのが、今回公式に作られたコーナーがフィットネスコーナーです。
それぞれ30分ほどのトレーニングですが、多少人の目が気になるものの、開放的な空間での軽い運動。 長距離運転の途中での気分転換に最適なものから、通常の疲れを癒すタイプのストレッチまで様々なトレーニングを提供しました。
ブラックロールの統括担当者は、以下のように話してくれました。
「「車」から「全てのモビリティ」、「全てのモビリティ」を取り巻く環境について考えてみましょう。
環境を配慮する、という言葉を聞くと自然を守ろう、動物を守ろうといった事を想像するのではないでしょうか。 しかし、私たち人間もまた動物です。
私たちの環境は丸い円を描くようにつながっている。 サステナビリティとは極端な考え方ではなくて、少しずつ全ての業界が協力していく事だと思います。 でも、そこで私たちは案外私たち人間は害をなす側、として健康への配慮を忘れがちではないでしょうか。
ブラックロールは「健康」を守るため、公式にエリアを提供された事に、喜びと誇りを感じます。」
主催社側からの働きかけで実現したフィットネスエリアですが、実際、来場者よりも展示者の方が多く訪れていました。 また、各企業では福利厚生の一環として社内に「健康を促進するものやシステム」を導入する傾向が強いそうです。
B4ホールからB6ホールまで3ホールを使い自転車、電気自転車からカーゴバイクまでを展示しています。
電気自転車にもやはり多くの車の技術が応用され、自動車ほど大掛かりではないが、より楽に、より安全に移動が楽しめる「乗り物」が大きなトレンドになりつつある事を実感できます。
各国の規制によって違いますが、時速25km以下は運転免許が不要となるので、街中で見かけるカーゴバイクの一部はまるで自転車の扱いです。
マイクロEVやカーゴバイクの人気の焦点となるのは、バッテリーの重量、走行距離、市内では駐車場の確保、価格、走行距離がほどほどで、自宅の電源からチャージ出来るなど特別なチャージウォールを利用しない点も人気の理由のようです。
電気自動車への移り変わりにどのように各国が対応していくのか、ぼんやりとですが見えていたように思います。
サステナビリティと環境配慮を前面に押し出したコンセプトの欧州車、AI技術とテクノロジーを最大限に活用を売りとした中国社の比較も面白かったかもしれません。
そして日本からはオランダからSEKISUIの「中間膜」という透明な樹脂フィルムを車体のガラス、フロント部分に利用したモデルカーが展示されていたのみ。 フロント画面前面やウインドーがモニターになるというアイデアは画期的で、近未来がまた一歩近づいた感があります。
中国車の活躍が目立ったものの、残念ながらコロナ渦リスクが高かったせいか、それとも前回からのキャンセルの波がつづいているのか、日系車メーカーの名前を見ることが出来ず。 開催前にハイリスク地域として指定されたこともあり、来場者の中にも日本人は比較的少なかったように感じました。
「電気自動車の覇権を握るのは、バッテリーを制したもの」と言われているようですが、現時点ではやはりバッテリーの性能・価格ではアメリカ・テスラと中国に軍パイが上がります。
車大国のドイツですら中国製のバッテリーを使うことも多く、今後の課題はバッテリー。
ところで、トヨタがソリッドステートバッテリーを搭載した電気自動車を発表予定、という明るいニュースもあったので、次回開催時には日本の参加が増えていることを祈っています。
*次のページには、特筆すべきメーカー、個人的に興味深かった製品やシーンをまとめています*
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