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「日本」をドイツに伝える【緑茶】

2019年2月1日に発効した日EU経済連携協定(EPA)は、今までもこれからも、日本にとって重要な貿易の相手である欧州との輸出入の強化を生み出します。 この協定の発効により、国産品の輸出拡大、EUの市場開拓が期待できます。 欧州にとっても日本にとっても、お互いに大きなメリットを享受することになります。

ドイツでの緑茶の流行

緑茶は抹茶が主力となり2000年前後より世界的にブームが広まり始め輸出量・額が増加しています。  日本からの輸出額は、2016年には前年比1.14%。 そして2018年には前年比6.8%増と過去最高を更新しています。

さらに、これまでの関税3.2%がEPAの発効により0%(撤廃)となり、今後ますます輸出拡大が見込まれています。 日本からの緑茶の主な輸出先は、アメリカ、台湾、続いて3番目にドイツが入ります。

ドイツ国内でも、近年は抹茶スイーツや抹茶フレーバーの何かが日常にも溢れてくる様にまでなりました。 地元スーパーで「緑茶」を使ったキットカット(欧州産)が販売されるようになったり、きちんと茶を点てて飲ませてくれる喫茶店も都心部に増えてきているようです。

珍しいもの好き

日本でも珍しい手揉み茶がドイツで 2018 Food & Life / 高梨茶園

ドイツ人の気質として、原材料が分かってしまうと食べたくないけれど、なんとなく味わってみて美味しかったらハマるタイプが意外と多くいます。

また「Exotisch エキゾチック」という言葉にも案外弱いので、「見た事ないし分からないけど、いい香りがする、なんだか綺麗、特別感を感じる!」 と良い意味での違いを感じると、受け入れも早い様です。

真面目な気質なのか、先にハマってから原材料や、その製造過程などが気になる様でしっかりと素材についても調べて、学び、もっと好きになる人も多くいます。

茶を飲む文化

元来ドイツ人はお茶好きなところがあります。 「特定の茶葉一筋」という訳でもなく、あらゆる種類の「茶葉」に慣れていた点からも、ドイツ人にとって緑茶は受け入れやすかったのかもしれません。

健康ブーム

有機栽培の緑茶・抹茶が好まれています。 緑茶の本来持つ効能に惹かれる人も多くいます。 欧州のBIO認証や、日本のJAS有機認証を取得したり、欧州の厳しい残留農薬基準を満たした茶を製造・販売する日本の生産者の取り組み、そして今も信じられているある種の「日本神話」(日本の製品は安心、安全)がここでも人気を後押ししているのかもしれません。

現状

良いお茶は出涸らしの茶葉も食べても美味しい

前述の通り、ドイツでは緑茶は地元のスーパーマーケットなどにも進出するほどに、ドイツ国民に受け入れられています。 ただし、ブームになるということは、安価で品質の粗悪なものも混ざり始める玉石混淆(玉石混合)の状態になり得る危険性もあります。

そもそもドイツでは、緑茶の輸入量は増大ですが、そのほとんどが中国茶です。 日本からの輸入品はわずか10%程度に過ぎません。

その中には、残念ながらお世辞にも「緑茶」とは言い難い商品も流通しているのが現状です。 初めての緑茶・抹茶デビューが粗悪品のせいで、本当に美味しいお茶を知らずに「緑茶は不味い」という評価を下されてしまう可能性も否めません。

これから

多くの人が抵抗なく「緑茶」を飲むようになった今だからこそ、品質の良い、本当の意味での「緑茶」を飲んで欲しいと活動する人々も多くいます。 その中でも長崎の茶友と丹沢の高梨茶園の協力を得て、ドイツ・ミュンヘンを拠点に緑茶の素晴らしさを伝える活動をしているプロジェクト Projekt T4G を例として見てみましょう。

煎茶・抹茶に慣れ親しんだ日本人が「美味しい」と思える品質のものを、ドイツに浸透させていきたい。 また「生産者の顔や人となりが見える茶を丁寧に紹介して、日本茶の豊かさを伝えたい」をモットーに、活動が現在行われています。

高梨茶園から四代目高梨さんも展示会で実演 http://takanashi-chaen.com/

茶友から園主の松尾さん夫妻も各種セミナーなどで実演 http://chayou.jp/

「ほんものの日本茶をドイツに」を理念とする同プロジェクト。 ドイツ各地の茶取扱い店やカフェ・レストランで、ドイツ人の緑茶への認識や好みを調査するところからスタートし、2016年にはEUの厳しい基準値を満たした厳選煎茶を第一弾として市場導入しました。 以降は神奈川県の高梨茶園と長崎県の茶友とのパートナーシップを軸にドイツでの日本茶普及活動を展開しています。

2018 Food & Life

翌2017年、そして2018年にはミュンヘンで行われる南ドイツ最大級の食品展示販売会 Food & Life に出展。 茶農家の方々が目の前で淹れる茶とトークが多くの来場者の関心を呼びました。

ミュンヘン五大陸博物館で行われたThementag Japanでの一般向け緑茶セミナー(2019年11月)

その一方で少人数制のセミナーや、実際に自分たちで茶を淹れるワークショップ、茶会を開くことで、ドイツでも家庭で十分に美味しいお茶を楽しむことが出来る事を伝えています。

緑茶に馴染みのある日本人でも意外と知らないような、例えば、水出し茶は旨味が強く、カフェイン抽出は少なめであること。 また、良質な茶葉の見分け、どのように茶葉が育てられているか?などもセミナーで伝えています。

良質な茶葉は均等な形、茶葉の先が丸まっている

またドイツの各種メディアに向けて、「日本食と日本茶」をテーマにPR活動も行なっています。 背景にある文化、茶葉の製造工程や環境などを伝えていくことで、より深い造詣を感じてもらえるのではないでしょうか。

寿司とのコラボレーション 寿司提供:Restaurant TOSHI

日本酒や寿司などは、すでに「物珍しさ」から「粗末な改悪品と上質なものが混ざり広がった状態」を超え、本来の寿司のうまさが定着し、改悪ではないアレンジを加えた新しいレシピが生まれつつあります。

この状況は、ひとえにドイツで活躍する各地の日本食レストランの経営者・シェフ、そして流通業者の努力で、高品質な本物の味を提供する取り組みが成功した事例のひとつです。

煎茶・抹茶は現在の玉石混淆(玉石混合)の状態から、次のステップへと進む状況にあります。 10年後の、20年後のドイツで飲める緑茶の味はどのように変化しているでしょう?

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