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欧州連合(EU)法とは 

ドイツ、そして欧州市場に参入するために避けて通れないのが、該当する製品やサービス分野の欧州連合(以下、EU)規則などと、関連する該当国の国内法の把握と対応です。例えば、製品安全基準、環境保護規則、データ保護など、多様な分野があります。

参入を目指す企業にとっては、EU法と国内法の双方への適合性が求められるため準備の負担が増えますが、EU法に対応すれば、原則的に、人口4.5億人の巨大市場であるEU全域での参入が可能になる、というメリットがあります。なお、該当法の施行までのタイムスケジュールや目標値などに修正が入ることもままあるため、情報収集は継続的に行う必要があります。

EU法の特徴とは?

  • EU規則(Regulation)は、加盟27カ国に直接適用され、加盟国の国内法より優位にある
  • EU統一市場内の商品・人・サービス・資本の自由移動を目指すもの
  • 柔軟性に欠け、対応への負担が大きい、という批判もある

EU法について

EU法には1次法と2次法がある。

1次法:

EUの基礎となる条約。欧州連合条約(TEU)、欧州連合機能条約(TFEU)など

2次法:

1次法に基づき制定される派生法。EU市場参入のために対応が必要となる法を含む
EUの2次法には、いくつかの種類があり、それぞれ、拘束力の有無や適用範囲が異なる。

EU2次法の種類

主なEU2次法には、「規則」「指令」「決定」「勧告」「意見」がある。

規則:Regulations

EUに参入する日本企業にとって、最も関連性の高いカテゴリー。EU加盟国全体に適用される、直接的で拘束力のある法形式。ドイツを含む全加盟国で直接適用され、原則として国内法より優先して効力を持つとされる。例えば、2022年には、EU内でのローミング料金に共通したアプローチが適用されるよう、改良版の「規則」が採択された。また、「一般データ保護規則(GDPR)」は、EUにおけるデータ保護とプライバシーを規定し、データ処理と利用者権利に関する厳格なガイドラインを定めている。食品関連では、「消費者に対する食品情報の提供に関する規則」が、食品製品への消費者認識の向上と消費者保護のため、包装済み食品のラベル表示に関する統一ルールを定めている。
なお、EU規則が具体的なルールを定めていない関連分野では、各国内法が補完的に適用される。

指令:Directives

EU加盟国が達成すべき目標を定める法律。加盟国は、目標達成のために国内法を策定する。例えば、「使い捨てプラスチック指令」では、皿、ストロー、飲料用カップなどの使い捨てプラスチックの使用の削減または禁止を目指している。

決定:Decisions

EU加盟国や個別企業など、特定の対象者に対して直接適用される。例えば、クロアチアがユーロ通貨を導入するとした「決定」は、同国のみを対象とするもの。

勧告:Recommendations

法的拘束力を持たない。EUは法的義務を課さずに、対象者に、自らの見解を表明し行動方針の提案を行う。

意見:Opinions

法的拘束力を持たない、声明。法律制定課程で、EUの主要機関(欧州委員会、欧州理事会、欧州議会)、地域委員会、欧州経済社会評議会が、特定の問題についての評価や見解を示すもの。

EU法は、なぜ重要なのか?

EUは、域内の安定性、安全性、公平性を促進するための、統一した法的環境の構築に取り組んでいる。EUが目指すのは、明確な法的枠組みの確立を通じて、消費者と企業の双方に利益をもたらす単一市場の形成を促進することだ。EU「規則」はEU全域に適用されるため、各国の政策形成や日常生活へも大きな影響を与える。

また、加盟国間の協力関係を促進し、貿易や環境保護、消費者権利など、国境を越えた課題に対処しつつ、均一な基準を維持していると保証することを可能にするものだ。「規則」が全加盟国に適用されることで、各国による「ばらつき」が生じにくくなり、商品やサービス、資本や人の行き来が容易になり、単一市場が円滑に機能する、というメリットがある。

なにより、「規則」が、遵守すべきルールを明確にするため、コストや法的不確実性が低減されるという利点もある。

EU法への批判はあるか?

一方で、批判もある。よく指摘されるのは、「柔軟性の欠如」と「負担が大きく、競争力に悪影響がある」という点だ。

柔軟性の欠如:

全加盟国27カ国に一律適用されるため、各国ごとの制度や社会状況の違い、異なる多様性に十分な対応がしにくい、という批判がある。

負担の大きさと競争力への悪影響:

特に中小企業にとっては、EU規則へ対応するための報告義務や体制整備を行うための高いコストが負担になることがある。また、一律的な厳しい規制への対応が優先されるため、イノベーションへの意欲が削がれたり、リスクを避ける傾向が強まり、新しい技術が発展する余地が抑制される恐れもある。例えば、携帯端末などへのUSB-C採用を義務化した「規則」は、消費者の利便性につながる一方で、新たな充電技術イノベーションの発展を阻害することにつながる可能性がある、という批判もある。

 

環境保護関連のEU「規則」の例

例えば、EUが環境保護のために制定した「規則」には、気候変動対策やサスティナビリティ強化の促進を目的としたものなど、さまざまな法律がある。

欧州気候法(European Climate Law):

2050年までの気候中立(温室効果ガスの実質的な排出をゼロにする)と、2030年までに1990年比較で、少なくとも55%の温室効果ガス削減を義務として定めている。気候変動適応策の強化、セクター別ロードマップの策定、欧州科学諮問委員会の設置などを規定し、EU全体の政策に気候中立目標を一貫して組み込む枠組みだ。

エコデザイン規則(Ecodesign for Sustainable Products Regulation, ESPR):

製品の循環性、エネルギー性能、再利用可能性を向上させるため、修理をしやすい設計要件などを定め、EU市場向け製品が、長寿命や低い環境負荷など、高いサステナビリティを持つようにするもの。

包括的な環境政策として、対象製品のライフサイクル全体における環境負荷の低減を義務付ける規則・指令群が、統合的に推進されている。例えば、包装・包装廃棄物規則(PPWR)は包装廃棄物の防止を促進し、使い捨てプラスティック指令(SUPD)により、使い捨てプラスチック製品の使用削減を目指している。また、修理する権利指令((EU) 2024/1799)で、消費者が修理サービスを受けやすくなるようにし、生産者責任制度(EPR)により、廃棄物の回収と再資源化を促進している。

森林破壊防止法(EU Deforestation Regulation, EUDR):

EU域内の製品(牛肉、大豆、木材、パーム油、ゴム、カカオなど)が、世界的な森林破壊・劣化に寄与していないことを示すための「規則」。2020年12月31日以降の森林破壊に関連していないことの証明が義務付けられている。該当事業者は、デューデリジェンス(適正評価手続)を実施し報告する義務があるが、EUが行う国別のリスク評価により、事業者に義務付けられる内容は異なる。

同法の施行は1年延期され、大・中規模事業者は2026年12月30日、小規模事業者は2027年6月30日からの適用が予定されている。

ドイツで暮らしていると、年々、EU内では、国を問わずに同一のサービスが得られる範囲が広まり、日常生活や旅行が便利になっていると感じられます。例えば、EU内なら旅行先でも携帯電話のローミングが無料なこと、オンラインショッピングがドイツと同じ感覚でできること、USB-Cでチャージできる電化製品が増えて便利なこと(個人的には、同梱されているUSB-Cケーブルは不要な場合もあるのでは…と思うこともありますが)など、意識しないうちにEU法の恩恵を受けている点が多々あります。

一方で、「EU」は、「国」と比べて一般市民にとってはまだ「遠く」感じられるのに、離れたところで重大な決定が下され、大局的には良い意図があっても、一律的に定められた厳しい規則への対応が負担に感じられている、という、印象もあります。

EUの「規則」を知ることは、製品の安全や環境、そしてデータ保護など、実生活に直結する分野で、何がテーマになっているのか、を考えるきっかけにもなりえます。EUは、欧州内の、異なる背景を持つ国々を統一市場で結びつけ、それぞれの意見を取り込み、統一法を施行します。この国間意見統一の試みは、EUが、EU以外の別の国や地域と、経済や環境問題に対処するための交渉を行う力を高めることにも繋がるのでは、と感じています。

調査・文:Y.Utsumi


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